「人間は、一生のうち3年をトイレの中で過ごす」
「もう1つの WTO」と呼ばれる「世界トイレ機関(WTO)」は、そう言って私たちを脅してきます。
若干ふざけた論理ですが、トイレの重要性を否定することは出来ません。
住宅を設計していると、どうしてもトイレはおざなりになってしまう。だって、
- 広々としたLDK
- 使い勝手の良いキッチン
- 便利なランドリールーム
- etc
トイレ以外にも考える場所が山のようにあるのです。真っ先にトイレを考える人なんて、まずいません。
だけど、3年です。3年間をトイレの中で過ごすのです。
私たちの、トイレライフを守るために、広さもしっかりと考察しなければいけません。
今回はトイレの広さを解説していきます。
住宅におけるトイレの広さ考察
新築一軒家における標準サイズは、
「0.5坪(169cm×78cm)」
です。
0.5坪のトイレは最もバランスが良い。
一般利用には充分なスペースがあって、無駄な費用もかからない。タンクレスでもタンク付きでも自由に設置することが出来る。住宅メーカーの方も、何も言わなければ0.5坪でトイレを設計します。
ただ、あなたがトイレに何を求めるかによって、最適なトイレサイズは異なります。
基本的なポイントを3つ覚えておきましょう。
【1】サイズは「91cmマス」で考える
→トイレサイズは「91cm」を基準に考える。「0.5坪(169cm×78cm」は「182cm×91cm」から扉や壁の厚みを除いたサイズ。
【2】最小サイズは「0.4坪」
→タンク付きの便器を置くだけなら「0.4坪(123cm×78cm)」で充分。
【3】通常利用なら「0.75坪」まで
→広くしすぎると使い勝手は悪い。おしゃれな手洗いと、大きな収納を置くことを考えても「0.75坪(169cm×169cm)」まで。
それでは、1つずつ詳しく解説します。
サイズは「91cmマス」で考える
日本の住宅は「91cm×91cm」の四角を組み合わせて設計されています。
これは、昔の日本の単位「間(けん):約182cm」の名残りです。
日本の住宅には「間」の文化が根強く残っているため「1cm単位の注文住宅」と宣伝していても、特別な事情がない限りは「一間」を基準に考えます。ただ、流石に「一間(182cm)」では融通が効かないため、半分にしていった「91cm」や「45.5cm」が設計の中心に存在するのです。
ちなみに、「一間(182cm)×一間(182cm)」が一坪です。
トイレの話に戻ります。
「91cm」や「45.5cm」を基準に考えたとき、最もシンプルなトイレの形は91cmマスを2つに並べた形です。
「182cm×91cm」ですね。
ここから扉や壁の厚みを除くと「169cm×78cm」になります。
これで日本のトイレの基準となる「0.5坪トイレ」の完成です。
ここから「91cm」や「45.5cm」を足したり引いたりすることで、他のトイレのサイズも表現します。
「45.5cm」を縦幅に足せば「0.75坪トイレ」になりますね。
反対に、「45.5cm」を横幅から引くことで「0.4坪トイレ」が完成します。
厳密に言えば「0.375坪トイレ」ですが、坪数で細かい表現をすることは稀なため「0.4坪トイレ」と呼ばれています。
トイレ便器だけなら「0.4坪(123cm×78cm)」で充分
便器だけを置くのならば「0.4坪(123cm×78cm)」でも充分です。
トイレを快適に使う基準は、
「便器の先端から40cmのスペースを空ける」
と設定されています。近年のトイレはタンクレスなら70cm前後、タンク付きでも80cmにはならないため、
80cm+40cm < 123cm
となり、0.4坪の奥行きでも充分快適です。むしろ、「トイレは狭い方が落ち着く」と考える人もいるため、好んで0.4坪で設計する人もいます。
ただし、
- 手洗い器
- 収納
などを設置する場合、0.4坪ではかなり狭くなってしまうので覚えておきましょう。
通常利用なら「0.75坪(169cm×123cm)」まで
どれだけ贅沢なトイレでも「0.75坪(169cm×123cm)」までに収めるのがオススメです。
と言うのも、広いトイレは不便ポイントが増えてくる。
掃除箇所が増えるのはもちろん、横幅を広げるとトイレットペーパーまで遠くなります。TOTOの公式サイトには以下のような一坪コーディネートがありますが、どう考えてもトイレットペーパーまでが遠い。
めちゃくちゃ不便です。
一応、独立したタイプのペーパーホルダーも存在しますが、一般住宅でこのタイプのホルダーを設置するのは非常に稀です。
唯一、もっと大きいサイズにするのは「バリアフリー対応」だけ。
車椅子が入れるトイレを作るのならば「1.0坪(169cm×169cm)」が基本になります。バリアフリーにする場合は床材や手すりなども考える必要があるため、なるべく早い段階で設計の方に伝えておきましょう。
広さ別のトイレコーディネートイメージ
ここからは、具体的なトイレのコーディネートを見ていきましょう。
広さのイメージは以下の通り。
【0.4坪(123cm×78cm)】
→最低限。タンク付きトイレ単体ならば問題ないが「タンクレス+手洗い器」を置くと窮屈になる。
【0.5坪(169cm×78cm)】
→標準。「タンクレス+手洗い器」がすっぽり収まる。
【0.75坪(169cm×123cm)】
→贅沢。「おしゃれな手洗い器」や「大きな収納」も収まる。タンク付きトイレだけしか置かないなら無駄。
【1.0坪(169cm×169cm)】
→バリアフリー対応。入り口を広くとり、車椅子を置けるスペースも用意できる。
それでは、実際に画像を見ながら、それぞれを詳しく解説していきます。
【最低限】0.4坪(123cm×78cm)トイレ
0.4坪は、現代の新築住宅における「最低限のサイズ」です。
もちろん、「快適に使える最低限」のため生活に支障が出ることはありません。
- タンク付きトイレ
- 小さめの収納
くらいならば問題なく収まります。むしろ、広すぎるトイレに抵抗感を覚える人も多いのです。
ただし、「タンクレストイレ+手洗い器」を設置するときは注意が必要です。
不可能ではありませんが、最小サイズの手洗い器を選ばないとトイレ内が狭くなってしまう。加えて、ペーパー位置が便器の真横に来るため、使い勝手も悪くなります。
「タンクレストイレ+手洗い器」を設置したいのなら、0.5坪以上のサイズで設計するのがオススメです。
【標準】0.5坪(169cm×78cm)トイレ
0.5坪は「標準サイズ」です。
画像の通り「タンクレストイレ+手洗い器」がピッタリ収まるイメージ。
この形が近年の新築住宅の主流です。そのため、TOTO、リクシル、パナソニックなど、大手トイレメーカーは0.5坪トイレにピッタリ収まるセットプランを豊富に取り揃えています。手洗いやカウンターの種類も自由自在ですね。
もちろん、「タンク付きトイレ」だけでもOK。
その場合、トイレ内のスペースに余裕が生まれるので、大きめの収納を設置するのもオススメです。
【贅沢】0.75坪(169cm×123cm)トイレ
少し贅沢に行くならば「0.75坪」です。
「0.75坪トイレ」は完全に贅沢サイズです。
利便性だけならば0.75坪が必要になることはなく、バリアフリーを考えるなら0.75坪では狭い。
そのため、0.75坪トイレで設計するなら、
- おしゃれな手洗い器
- おしゃれなカウンター
などを設置して、こだわりの空間を作るのがおすすめです。
【バリアフリー】1.0坪(169cm×169cm)
1.0坪は「車椅子対応のバリアフリー」です。
これはもう別枠ですね。
車椅子から便器への移動は横からスライドさせるのがベター。
そのため、便器の横に車椅子が入れるスペースを作っているサイズ感です。場合によっては手すりなどを設置します。
正直に言って、二世帯住宅以外でバリアフリー対応にする方は非常に稀です。
広い分だけ掃除の手間もかかりますし「将来を見越して…」とお考えならば、リフォームしやすい構造で作るをオススメします。
まとめ
トイレの広さは「0.5坪(169cm×78cm)」が標準です。
「タンク付きトイレ」のみのシンプルコーデ、「タンクレストイレ+手洗い器」のおしゃれコーデ、どちらでも収まりが良くなっています。
もちろん、場合によっては、
【0.4坪(123cm×79cm)】
→タンク付きトイレだけを設置する。
【0.75坪(169cm×123cm)】
→大きな収納や、おしゃれな手洗いを設置する。
これらの形を選ぶのも"あり"です。
あなたがトイレに何を望むのかを決めてから、しっかり設計の方に意見を伝えていきましょう。
また、注文住宅のトイレについて、もっと詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
「トイレの間取り」や「おすすめの便器」についても詳しく解説しています。
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