「住宅の性能」を難しく考える必要はありません。
覚えておくべきは次の3つ。
【耐震性】
→地震に強いかどうか。「耐震等級」で表現される。
【断熱性】
→熱を逃さないかどうか。「UA値」で表現される。
【気密性】
→スキマがあるかどうか。「C値」で表現される。
この3つが基本であり、全て明確な数字で表現できます。
そのため、「うちの会社の家は性能が良い!」なんて言っても具体的な数字を出せない会社は良い会社とは言えません。
今回は「家の性能」についてじっくり解説していきます。
注文住宅における3つの基本性能とは
「家の性能」の定義は曖昧です。
建築方法をアピールする会社もあれば、基礎を声高に叫ぶ会社もあります。断熱材の素材のところもあれば、断熱材の厚みのところもある。
大切なのは「トータル面」です。
例えば、丈夫な構法で作っても基礎が緩ければ意味がありません。優秀な断熱材を使っても、薄く使えば意味がありません。
1つ1つの要素ではなく「トータル面」で考えて、且つ、明確な数字を出せなければ粗悪な家なのです。
そして「トータル面」を確認できる項目が次の3つ。
【耐震性】
→地震に強いかどうか。「耐震等級」で表現される。
【断熱性】
→熱を逃さないかどうか。「UA値」で表現される。
【気密性】
→スキマがあるかどうか。「C値」で表現される。
それでは、1つずつ詳しく解説していきます。
耐震性
地震への強さです。
建築方法や基礎構造などによって左右され、現代の新築住宅は次の3つに分類されます。
【耐震等級1】
→最低限。震度6~7レベルの地震で倒壊しない。
【耐震等級2】
→耐震等級1の1.25倍の強度。
【耐震等級3】
→耐震等級1の1.5倍の強度。
耐震等級2以上の家であれば、地震そのもので倒壊する可能性はほぼありません。
加えて、「制振ダンパー」などの揺れを抑える装置を導入することで、地震への被害を大きく減らすことが出来ます。
断熱性
住宅の熱を逃さない性能です。
断熱性が高い家だと「夏は涼しく、冬は暖かい」を実現できます。住宅の基本とも言える性能です。
断熱性能には、住宅のあらゆる要素が複雑に絡み合います。
- 建物の構造
- 断熱材の素材
- 断熱材の厚み
- 窓の種類
- 窓のサッシ
- etc
それぞれを素人が全て把握するのは難しい。そのため、断熱性能を表す「UA値」が存在してします。
ただし、「UA値」の提示は義務ではありません。
そのため、
「うちの家は断熱性能に優れていて〜」
なんてアピールしながら、UA値を言わない悪徳メーカーもあるので注意してください。
気密性
家のスキマをなくす性能です。
気密性は、いろんな意味で「家を守る性能」です。仮に、スキマが多ければ断熱性は意味がなく、壁内結露によって家そのものにダメージを与えてしまう。
そして、気密性能を高めるのは難しい。
先に紹介した断熱性能は、頑張ればどこの住宅メーカーでも実現できるのです。極論を言えば、良い建材を使えば断熱性能は高まる。
ところが、気密性能は違います。
設計はもちろん、現場単位での高い技術力が必要になる。そのため、施工数が多い大手ハウスメーカーの方が気密性能は苦手だったりするのです。
気密性能は「C値」で表現します。
ところが「C値」を公表している大手ハウスメーカーはほとんどありません。
「C値」は職人の施工1つで大きく変わるため、下手な数字は提示できないのです。
"ちょうど良い性能"の考え方
性能は、高すぎるとコスパが悪くなります。
耐震性や断熱性は、お金をかけることでどんどん高めることが可能です。しかし、街中でスポーツカーに乗る意味はないように、高めすぎた性能はかけたお金ほどのメリットを得ることは出来ません。
そのため、住宅の性能を意識する場合でも「ちょうど良い性能」を狙うのがベストなのです。
もちろん 、
- 予算がめちゃくちゃ豊富
- 北海道などの極寒地域に建てる
- デザインより性能が大切
みたいな場合は突き詰めていくのも"あり"です。
ただ、「コスパを意識しつつ、性能の良い家を建てたい」のならば、以下の数字を目安にしてください。
【耐震性】
→耐震等級2,3 プラスα
【断熱性】
→UA値0.6
【気密性】
→C値0.9
それでは、1つずつ解説していきます。
【耐震性】耐震等級2,3 プラスα
耐震性は「耐震等級2,3 プラスα」が目安です。
耐震等級2,3であれば、地震そのもので倒壊する可能性は限りなく低くなります。耐震性能そのものはこれでOK。
ただ、耐震等級だけでは、揺れを抑えることが出来ません。
そのため、家具の倒壊やガラスの破損で二次被害が起こる可能性があります。それらを防ぐために、揺れを抑えるためのプラスαがあると安心です。
新築住宅においては「制振ダンパー」が一般的。
標準仕様に入っていなくても、オプションで20万円ほどで導入できるところがほとんどです。興味のある方は、一度確認しておくことをオススメします。
【断熱性】UA値0.6
断熱性は「UA値0.6」が目安です。
「UA値0.6」は、国が定めるZEH基準の数値。必ず実現する必要はありませんが、この数字を意識している住宅メーカーは性能への意欲が高いと言えます。
【ZEHとは】
ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)のこと。
住宅の断熱性と気密性を高め、太陽光発電でエネルギーを作ることで、住宅に関するエネルギーをゼロにする施策。
太陽光発電の設置はさておき、ZEHが定める基準である「UA値0.6」は良い目安です。
また、断熱性は低くて損をすることはありません。検討中の住宅メーカーのUA値がめちゃくちゃ低かった場合、素直に喜んで大丈夫です。
【気密性】C値0.9
気密性は「C値0.9」が目安です。
気密性能そのものに明確な基準はありませんが、湿度を適切に管理できる目安として「C値0.9」は広く知られています。
ただ、C値は家によって大きく異なるので注意が必要。
数値上である程度計算できる耐震性や断熱性と違い、気密性(C値)は一棟ごとの測定が必要不可欠なのです。測定には手間がかかるため、標準で測定まで行う住宅メーカーはほとんどありません。
よって、本格的に気密性を高たい場合は、オプションで気密測定を依頼する必要があります。
メーカーにもよりますが、5万円~10万円ほどで可能です。
まとめ
住宅の性能を意識するのであれば、
【耐震性】
→地震に強いかどうか。「耐震等級2,3 プラスα」が目安。
【断熱性】
→熱を逃さないかどうか。「UA値0.6」が目安。
【気密性】
→スキマがあるかどうか。「C値0.9」が目安。
この3つを覚えておけばOKです。
ただ、正直に言うと、あまり考えすぎなくても大丈夫。
そもそも「住宅の性能」なんてめちゃくちゃ高次元の悩みです。フォアグラを食べるか、キャビアを食べるかみたいな話。
UA値やC値を公表しているのは、一部の高性能住宅メーカーだけです。
大手メーカーでも公開していないところは多く、建売住宅なんて考えてもいません。ましてや、築年数が経った中古戸建やマンションなんて測定したらとんでもない数字が出てきます。
それでも、楽しく人は暮らせるのです。
性能に拘るのは悪いことではありません。ただ、性能にとらわれすぎると楽しい家づくりもどんどん面倒になってしまう。
令和の時代に建てる家に大失敗はそうそうありませんから、性能を考えずに建てるのも"あり"だと私は思っています。それでも、おしゃれで楽しい家はいくらでも建てられますから。
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また、高性能な家が建てたいのであれば、厳選したカタログを請求することも出来ます。
大手住宅情報サイトの「ライフルホームズ」を使えば「高性能住宅」や「ZEH対応」の住宅メーカーを探せるため、興味のある方はそちらもご覧ください。